前回ゴルフの話を書いたので思い出したことがあります。
もう10年以上前の話です。
得意先のゴルフコンペに参加したときのことです。
そのコンペのまとめ役をされていたのが、その得意先の出入り業者の社長さんでした。
お菓子関係の会社の社長さんだったのですが、なんといってもカッコいいんです。
ラウンド後のパーティでは白の三つ揃いのスーツを白いワイシャツの胸元をはだけてラフに着こなしていらっしゃいました。
年齢は70歳くらいでしょうか。
本当にダンディな方でした。
その方がスピーチをされました。
最近、日本手ぬぐいを普及させることに凝っているという内容でした。
ハンカチやタオルが主流の現在に日本手ぬぐいの美しさを見直そうよ、みたいな内容です。
汗を拭いたり、ハンカチと同じように使えるのはもちろん、怪我をした場合などはビリビリと引き裂いて止血したり、包帯代わりにもできるんです。
簡単に裂けるんです。ホラ。
むかしは鼻緒の挿げ替えに使っていたんだよ。
柄もカッコいいでしょう。
みなさんに1枚ずつプレゼントしますね。
私も1枚、風鈴柄のとてもオシャレな日本手ぬぐいをいただきました。
服装もカッコイイですし、話の内容もオシャレでとても面白い話でした。
私はそれから日本手ぬぐいに興味を持って、実際に自分でも数枚購入して使ってみたり、友達にプレゼントしたこともありました。
その社長のカッコよさを通じて、ちょっとしたプレゼントに日本手ぬぐいを送るというのがとてもセンスがよいことに思えました。
その日、私はロングホールで奇跡的なショットが出てイーグルを出していました。
その社長さんは私のイーグルの話を聞いて、私に、凄いねー、あのホールでイーグルなのー? イーグル賞なんか出さないとねー。おめでとうございます!。
初対面の私にいろいろと話しかけてくださいました。
こんなふうに年齢を重ねていきたいと思いました。
それから3ヶ月ほどして、たまたま帝国データバンクにその社長さんのお菓子会社が倒産したことが掲載されているのを発見しました。
本当に驚きました。
同じ屋号の会社ではないかと思い、ゴルフコンペのときにいただいた名刺と見比べて確認したのですが、間違いありませんでした。
あの日からたった3ヶ月です。
廃業ではなく、破綻です。
負債が何億円かあったと思います。
あのコンペの日、社長はこの日が来ることをわかっていたんだと思います。
私のような能無しの経営者でも自分の会社の数ヵ月後のことはわかっています。
きっと、苦しい毎日を過ごされていたんだと思います。
コンペも休んでもよかったのではないかと思いますが、やっぱり毎年恒例なので参加したのでしょう。
そしてあの素晴らしいスピーチ。
私も心の中は不安がいつも渦巻いていますが、得意先やご近所さんに普通に接しています。
努めていつもどおりにしています。
しかし、家族の前でいつもどおりに出来ているかと言われると自信がありません。
妻は私の仕事の現状を理解しています。
しかし子供は・・・
ここ最近お小遣いもあげたことはありませんが、何も文句を言いません。
子供なりに感じてはいるのかもしれませんが、私は自分の子供に「お父さんね、もうすぐ会社が倒産して破産するかもしれないんだよ。この家にも、もうすぐ住んでいられなくなるかもしれないよ」とは言えません。
その社長もしっかりとされていました。
例え倒産されたとしても私の理想です。
見習いたいものです。